2024年4月30日火曜日

日本に住んだイギリス人作家 アンジェラ・カーター『花火』

 カズオ・イシグロの先生であるアンジェラ・カーターの名前を知ったのは、カズオ・イシグロを一冊も読む前だった。

『ニューヨーカー』か何かの記事で紹介されていた。日本を訪れたことがあり、二つの文化を行き来する感性を持つ作家として。その時何冊か読んだ中にこの本があった。『Tokyo Vice』を見てカーターを思い出し、再び手に取った。この短編集の中で直接日本が出てくるのは「日本の思い出」と「肉体と鏡」の二作。どちらも東京が舞台。

それらの作品を読んでいて受ける印象は、異国の地を歩くときの浮遊感。生まれ育ったこの土地が、遠い地に感じられる。

カーターに独特なうねうねしたた表現がその印象を強める。例えばこんな具合。

都市、世界で一番大きな都市、私のヨーロッパ的期待には合わないように造られている都市、この街の暮らしは外国人にとって、夢の謎の持つ透明さ、読み解くことのできない透明さを持つように思われる。そして、それは自分で見ることのできないような夢である。

 アジアだ! だが、そこに住んでいても、アジアのこの街は、いつも私から遠く離れているように思われた。まるで私と外の世界の間にガラスがあるように感じられた。

この感じ!この夢の中にいるような感じを掴みたいと最近思っている。 

明日、明後日はお休み。

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東浩紀がいま考えていること・7──喧騒としての哲学、そして政治の失敗としての博愛 @hazuma #ゲンロン240519

先日見たシラスの番組で色々考えさせられたので、感想をこちらに転記します。 「この時代をどう生きるか」という悩ましい問題について多くのヒントが示された5時間だった。