魚豊さんのことはゲンロンで知った。地動説を唱えた人々を描く『チ。』で有名になり、最近では陰謀論にはまった男性を描いた『ファクト』が話題になっているらしい。その題材のとんがり具合に興味をそそられる。と言いながら、なんとなく読むのを引き延ばしていたのだけれど、最近またゲンロンでの対談を見直していて衝動的に彼の作品を読みたくなった。
インタビューを読むと、ギャグ漫画でデビューしてストーリー漫画に移ったが、物語の骨格(三幕構造)を思いつくまでストーリー漫画が書けずに苦労し、その後連載を書くにあたってどのように構築してよいか分からず苦労したという話だった。その初連載が『ひゃくえむ。』
『ひゃくえむ。』絵がうまいわけではないけれど、百メートルの競技に賭ける思いが、そのまま生きることの意味を問うことにつながっていて、すっごく面白い。といって思弁的になるわけではない。キャラクターの動機とアクションによってぐいぐい引っ張る。物語の骨格がとてもわかりやすい。主人公の持つ生きることへの不安や自己疑念が、自分の陥りやすい思いに重なるため、主人公の戦いに勇気づけられる。
物語の原型ってこういうものなのかも、と思いながら読んだ。
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