こうの史代と言えば『この世界の片隅に』で知られているので、戦争を描く漫画家というイメージがあるかもしれないけれど、そんな固定されたイメージに収まらない作家だ。『こっこさん』は、ひらめきマンガ教室の受講生が作品の参考にしていたので、どのように参考にしているのか知りたくて読んだ。
雄鶏を拾ってきて飼う話。日常のなかにぴりりとアイロニカルな出来事が生じる、サザエさんのような話の集まり。ボールペンで描いているのかな。線が細くて、トーンをほとんど使っていない。にも関わらず、クライマックスのシーンが美しい。だいたい最後から2ページ目に、半ページほど使う大きなコマで、余韻を残す絵が描かれる。
読んでいて思ったのは、マンガというのがいかに文字以外の情報量が多いかと言うこと。それが小説と決定的に違う。『こっこさん』では雄鶏とやよいとの関係性はほとんど絵によって描かれる。絵によって鶏の凶暴さとか、やよいとのやり取りが読み取れる。さらにコミカルな要素も含まれる。笑いは言葉ではなく絵を通じて伝わってくる。しかも非常に記号的な描写を通じて。
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