2024年6月30日日曜日

町屋良平 芥川受賞作『1R1分34秒』

ある負けが込んだプロボクサーが、一つの試合に負けてから次の試合までの日々を描く中編。
生きることの無為の描き方がよかった。先が見えず、将来を考えることも出来ない日々の意識を形にできるのがすごいな。エンタテイメントと純文学の違いの重要な部分は、エンタテイメント小説では明確な筋の枠組みが必要で、論理的に意味が通じるものではないといけない。エンタテイメントでは、筋がなければ成り立たない(と一般的に思われている)。それに対して純文学は、筋がなく論理的なつながりがなくて成り立つ。無為が描けるとはそういうことだ。先日読んでいた中山七里の推理小説では、同じ「小説」という形式をとっていても作り方がまったく違う。無為を描きながらそれを小説として成り立たせていて、しかもとんがったセンスが感じられるのが好きだ。

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東浩紀がいま考えていること・7──喧騒としての哲学、そして政治の失敗としての博愛 @hazuma #ゲンロン240519

先日見たシラスの番組で色々考えさせられたので、感想をこちらに転記します。 「この時代をどう生きるか」という悩ましい問題について多くのヒントが示された5時間だった。