2024年4月28日日曜日

山崎豊子のデビュー作『暖簾』

『暖簾』は大阪の昆布商人の二代記。
日清戦争直後から太平洋大戦終戦の十年後まで。
400字詰め原稿用紙で約340枚。
2部構成で、第1部は父吾平が大阪に出て丁稚となってから独り立ちして店を大きくし、太平洋戦争で店が焼かれるまで、第2部は徴兵された息子孝平が帰宅して店を立て直し、統制経済から自由経済への移行を生き抜き、変わる経済のなかで店を立て直すまで。ラストは、新たな大資本との対決で終わる。
山崎豊子の実家が昆布商人で、実体験から材を取っているらしい。
ストーリーはオーソドックスな商人の成功物語で、厳しい下積みから這い上がる過程と、時代の移り変わりや競争を生き抜く戦いがドラマを生み出している。
この話の他の人に真似できない優れた点は、ディテールの確かさ。
昆布の質感、香り、触感がリアルであり、細かい商売の変遷をふわふわとごまかさずに捕らえている。必ず数字を書いているのが、リアル。さらに、歴史の移り変わりときちんと結びつけて書かれているのが厚みが出ていてよい。神は細部に宿るというけれど、まさにそれを地で行っている。この商売のディテールの確かさが後に『白の巨塔』、『華麗なる一族』を書く土台になっている、というより彼女の方向性を示すものとなっている、と思う。

今まで山崎豊子を「ポピュラー作家でしょ」と軽く見ていたことを反省。ここまで書いてくれたら、読む満足感はかなり大きい。それは単純にすごい。

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