第57回メフィスト賞受賞作、黒澤いづみ『人間に向いていない』は、ある日息子が虫に変形していたという、カフカ『変身』を思わせる話。違うのは、この「異形性変異症候群」がニート、引きこもりなどの若年層を中心に日本国内で蔓延しており、一旦発症すると「致死性」と認定されること。カフカを彷彿とされる設定だがメフィスト賞作品であることから分かるように読みやすいエンタテイメント小説として作られている。別の言い方をすると単線的で深読みには適さないということでもある。特異な設定だけれど、ニート、引きこもり問題をテーマとした家族小説。結論もベタでわかりやすい。あと、異形化した息子の優一がそれほどおぞましく感じず、むしろ愛嬌があるように思える点も『変身』と異なる。内容的にはもっと重くどろどろしたものになり得たけれど、さらっと書かれているおかげで苦痛を感じずに読める。途中で挫折することが多い私としては珍しく、すいすいと2日で読了した。ミステリーよりも読みやすいくらい。その点はエンタテイメント小説としてはプラスだろう。
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