ヴァージニア・ウルフは間違いなく偉人の一人だ。文学の歴史を紐解こうとする者は彼女の名前を無視することはできない。しかし、どこか捉えどころのない女性であることも確かで、先達として彼女を尊敬しつつもなかなか個人的なつながりを感じづらかった。
ヴァージニア・ウルフの名前を初めて知ったのは大学生の頃だ。母校はリベラルな女子大の例にもれずフェミニズムに強く傾倒しており、ヴァージニア・ウルフの資料のコレクションを保持していた。特に文学を専攻していたわけでもヴァージニア・ウルフに興味を持っていたわけでもなかったが、意識せずとも彼女の名前が記憶に刻み込まれた。また、ちょうどその頃、町の芸術的な方の映画館(町には2つ映画館があった、一つは芸術的な映画を上映する古い劇場でもう一つはショッピングモール内の映画コンプレックスだった)で『オーランド』を上映しており、話題になっていた。当時の私は『オーランド』がなぜそんなに話題になるのか見当もつかなかったし、見に行くこともなかったが。
実際にウルフを初めて読んだのは大学を卒業したあとだった。なぜ読んだかは覚えていないけれど、多分、有名な文学作品だから読んでみようという軽い気持ちだったと思う。その結果、残念ながら理解できなかった。でも、強い印象を受けたのは確かだ。すごい作品だ、と理解できないなりに思った。